ベンツの作ったバイク
スズキやカワサキ、ヤマハ…バイクと言えば日本メーカーを連想する方も多いと思いますが、世界で最初にバイクを作ったのは実はベンツ(現ダイムラー)です。
自動車メーカーとしてのイメージが強く、しかも重厚な車を世に送り出す印象があるだけに、バイクをいち早く手掛けていたと聞くと意外に感じる方もいらっしゃるかもしれません。
面白いことに、ベンツの創始者(正確には、前身の会社となるダイムラー・モトーレン・ゲゼルシャフト社)であるゴットリープ・ダイムラー氏は、車よりも先にバイクを作ろうと考え、実際に制作して特許まで取得しています。
これが1885年のことで、今から140年ほど前の話となります。
スペックはどんなものだったか?
140年近く前のバイクですから、現在のバイクのイメージで考えるとちょっと肩透かしを食うかも知れません。
この世界最初のバイク「リートワーゲン(Reitwagen)」は、実験の際にダイムラー氏が息子を後ろに乗せて走らせたと言われており、その速度は時速10km程度と言われています。
出力は264ccの0.5馬力で、当時としては最先端の技術を採用したうえでのスペックでした。
現在の視点から考えると、「自転車よりも遅い」「それどころか走ったほうが速い」と残念に思う方も多いかも知れません。
試作で終わる
実は、これはあくまで試作だけで終わってしまいました。
商品として成り立つのは難しいと判断されたのでしょう。
その後ダイムラー氏は四輪車の製造に取り組み、こちらは見事に製品化に成功し「世界最初の自動車を作ったメーカー」の栄誉を手にすることになりました。
そしてベンツは自動車メーカーの道を歩み続け、現在でも高い評価を得ているとともに、バイクと結び付けられる機会がほとんどない状況になっています。
では、製品化・量産化されたバイクはどこか最初なのでしょうか。
さぞかし有名なメーカーが実現したのかと思いきや、市販化に成功したのはヒルデブラント&ヴォルフミュラーという会社で、1894年のことでした。
ベンツによる試作から10年弱の間に速度は時速45kmと飛躍的に向上しており、排気量は1499ccとなりました。
かなり重厚な印象があるとはいえ、当時かなり話題になったようで3000台ほど売れた記録が残っています。
ちなみに、日本最初のバイクはそれからさらに15年後の1909年、島津楢蔵という人物が製造した「NS号」というものでした。
それ以前に1896年の段階で先述した世界最初のバイクが日本に輸入されていましたが、当時はあまりにも効果だったために普及することはなかったようです。
日本で本格的なバイクの普及が見られるようになるのは戦後になってからで、特に本田宗一郎率いるホンダが「庶民の足」としてバイク開発を手掛けたのがきっかけと言われています。